飲んだ後のラーメンがやめられない
ラーメンが好きだ。
正直、夜に食べるラーメンは昼食べるよりも数段美味しく感じると思う。
あるお気に入りのラーメン屋があるのだが、お昼時に腹ペコの状態で同じものを食べても、
「うん、ラーメンだな」
くらいにしか感じない。
いや、確かにそのラーメン屋のラーメンは特筆すべきものもない、何の変哲もないフツーのそれであり、美味しいか美味しくないかと問われたら、「まぁ普通っしょ」くらいのスタンスを維持しているラーメン屋である。
しかしこれが夜になるとどうだ、数段美味いのである。
何だこの現象は。背徳感なんかが関係しているのか?
大将はマジシャンなのだろうか。たぶんなんかのマジシャンだ。
ひとまず、この夜にラーメン食べるとなんかいつもより美味しく感じる現象を、
「夜にラーメン食べるとなんかいつもより美味しく感じる現象」と呼ぶことにする。
私はかれこれこの店に中学生の頃から15年は通っている。
引っ越しをして、場所も遠くなりなかなか行きづらい状況になろうとも、タクシーをぶっ飛ばして行く。タクシー代は2000円くらい。
なぜそこまでしてそんな普通だと言い切るような店に行くのか。
この「普通」が大事なのである。
平素からリア充生活を謳歌されていらっしゃる皆さんでも、こんな私と同じこの感覚がお有りではないだろうか?
流行りの店やちょっと敷居の高いお店にはない、この安心感。
実家に帰ってきた時のような、靴下を脱いだ時のような、部屋にGがいる!と思ってよく見たら昨日食べたナスの切れ端かと思ったらGだった時のような。
この「ホッ///」とする感覚が私の足を向かわせるのだ。
ホッとするって、チョーいいよね♡
私はお酒を飲むのが大好きなので、このラーメン屋に行くとまず数品つまみながら飲む。
餃子や骨付カルビ、今日は酢モツにしようか。
いや、おでんもいいな。
豚足、か。
え、豚足にする?
ポッくん今日豚足にしちゃうー??
えっ、チャーシューすか?
などとニヤニヤしながら構成を熟考しつつ、一杯200円の焼酎を流し込むのだ。
ひとしきり飲んだところで、お待ちかね。
真打の登場である。
しかし、この頃流行りのお腹がキュートな男の子気味な私は、このラーメンをやめようと思っている。だってモテたいじゃん?
だが、なかなかこれが難しい。
腹がまだ減っているのかといえば、いろいろとつまんでまぁいい感じにはなっているし、別段食べなくても大丈夫そうなのだが、なんせこの匂いである。
しかも酔っているのだ。
ただでさえ夜という条件が揃っているのに、お恥ずかしながら酔ってしまっているのだ。
「いいじゃん、喰いなよ。そんな1日我慢したところで変わんないっしょ(笑)」
と、スープの匂いがそう耳元で囁いてくるのだ(豚骨)。
夜+酔い+背徳感=食べないと死ぬ
この式が完成されてしまっている以上、私はもう手も足も出ない。
しかも、この状態で食べる場合は大量のニンニクを入れてしまうきらいがある。
非常にケイオスだ。
非常に危険な状態だ。
dangerousである。
「夜ーメン現象」について、一つわかったことがある。
ある日私は大将に聞いてみた。
「なんか昼と味違うくないっすか?」と。
何の気なしに、するりと口から言葉がこぼれた。アホみたいな顔して。
「一緒だよ。でもねぇ、うちはねぇ、この時間のラーメンには自信があるんだよ。」
なんということだ。
食べてしまうはずである。
ここのラーメンには得意な時間が存在したのだ。
大将の今世紀最大級のドヤ顔から察するに、自信があるのも間違いないようである。
アクロンのオシャレ着洗いよりも自信が持ててそうなほどだ。
やはりマジシャンだったのだ。
ラーメンに時間という調味料をプラスして、最高のperformanceをこの時間(PM23時〜AM1時)に発揮できるようにするよくわからないが何かしらのマジックを仕掛けていたのである。
食べてしまうのも納得である。
私はまたこうしてシメにラーメンを平らげ、大将のマジックにまんまと騙されて帰るのである。アホみたいな顔して。
嗚呼、モテたい。